研究開発

四半世紀のピリミジン研究の実績です。

代表取締役古川の研究歴をご紹介します。
ほとんど注目されていないピリミジンですが,その研究にこだわる理由があります。

ラクトセラムの構造
青が窒素,赤が酸素です。

ピリミジン研究のきっかけ

1994年に当時勤務していた会社から,既存製品の用途開発研究というミッションを受けて渡米,研究開発の子会社に着任後すぐに注目したのが核酸栄養でした。
当時のアメリカではハーバードメディカルスクールのWilmore教授の提唱したグルタミン,さらにアルギニンといったアミノ酸が免疫賦活に有効な半必須栄養素として注目されていました。国内では,高知医科大の小越先生ご考案の核酸輸液OG-VIが医薬品としての臨床開発も行われており,核酸の時代が期待されました。

OG-VIはプリンとピリミジンが等モルですが,私は同じ核酸でも,プリンとピリミジンの役割は異なるとの認識で,当時自社製品でもあったオロト酸Orotic acid)に注目しました。たまたま赴任地のセントルイス大学にピリミジン研究の草分けのAnil Kulkarni教授がいらしたという運もありました。当時の発想は,ピリミジンがグルタミンやアルギニンなどのアミノ酸よりも,より不足しやすい栄養素という観点で,免疫賦活創傷治癒新陳代謝など律速栄養素の観点での研究からのスタートでした。

上記がKulkarni教授によるピリミジンの免疫賦活効果のデータで,これがピリミジン研究のスタートになりました。(Transplantation 1985 40(6):694-7)。
核酸フリー飼料というのは,アミノ酸は充足しておりマウスの成長には全く差がありません。しかし免疫能が低下し,腹腔内にC.ablicans(酵母)を投与すると,マウスは2週間程度で死亡します。アデニンの添加は効果がなく,核酸による免疫賦活の鍵はウラシルである事が見出されました。ラクトセラム(Orotic acid)における免疫賦活効果はウラシルと同等である事は,Kulkarni教授との共同研究で確認しました。

グルタミンとピリミジンの思い出話

山本茂先生にアミノ酸と核酸合成の関係をご説明した資料

アメリカ赴任後にKulkarni教授からご紹介頂いたのが,当時国内でアミノ酸・核酸栄養の第一人者であった徳島大の山本茂教授でした。山本教授はMRSA感染モデルマウス試験で,2%のグルタミン添加より,4%のグルタミン添加でマウスの免疫能がさらに高まる事を確認され,さらに0.5%の核酸4%のグルタミン以上の免疫賦活効果を見出されていました。

山本教授から,核酸の効果の理由についてアイデアを求められ,その時に提出したのが右のシートです。アミノ酸生産菌の菌株改良の実績のお蔭で代謝マップは見慣れてましたので,早々に考えていた事でした。

即ち,グルタミンの効果はピリミジンへ転換されての効果,アルギニンの効果は,酵素のKmからAspはアルギニンに優先合成されており,アルギニンの添加では,アルギニンが充足する結果として,グルタミンからのピリミジン合成の亢進にあるという説です。

後に山本先生は,Caco2細胞を使って,ラベルしたグルタミンからのピリミジン合成がアルギニン添加で高まる事などで仮説を実証頂きました(Nutrition 2002;18:329 –333)。

また,Wilmore教授の弟子であったエモリー大のZiegler先生にもグルタミンとピリミジンの関係をご説明した結果,後にグルタミンによるアポトーシス防止効果ピリミジンを介する効果である事や,小腸上皮細胞の修復鍵栄養ピリミジンである事などを論文化頂きました。

研究ターゲットの発展(栄養から炎症へ)

マウスを使った創傷治癒の試験において,治癒の亢進だけでなく,抗炎症作用が確認されました。当時たまたま会社の医薬総研で,喘息薬のスクリーニングが実施されていたので,医薬総研の知り合いにお願いしてフリー体亜鉛塩をスクリーニングに加えてもらったところ,なんと最終6化合物フリー体亜鉛塩が残り,特許も取得しました。

抗喘息作用をモルモットを用いたLTD4誘発気道過敏性モデルで確認。

オブアルブミン刺激による白血球の気道への浸潤を好酸球特異的に阻害。

このころから,アデノシンの炎症ピリミジンの抗炎症の関係に注目しました。Th1Th2の免疫バランスがアデノシン,ピリミジンで動く事から,核酸バランスという見方にも気づきました。残念ながら,帰国後にピリミジン研究が会社のテーマには認められなかったので,起業して研究を継続する事を選択しました。

その後,抗喘息作用は花粉症サプリメントにターゲットを移し,花粉暴露室での鼻のかゆみなどに対する即効的な効果なども見出しています。

ピリミジン合成とミトコンドリア

ピリミジン研究の継続を考えたきっかけのひとつが,ピリミジン合成とミトコンドリアの呼吸鎖とのリンクにあります。蛋白合成や細胞分裂に不可欠な材料である核酸と,エネルギー合成がリンクしている事は極めて合目的性があります。ミトコンドリアはDHODHというたったひとつの酵素で,核酸合成をコントロールできます。また,加齢や酸化ストレス障害でミトコンドリアの機能が低下すれば,ピリミジン合成も低下する関係にあり,直感的に,少なくとも当時ブームであったCoQ10よりも効く成分と考えました。

エネルギー代謝とピリミジン

その後の研究でエネルギー代謝の鍵成分としてのピリミジンの生理作用が見えてきました。そのきっかけはビール会社との抗疲労に関する共同研究でした。

まず,マウスの強制遊泳時間がオロト酸(OA)の摂取で顕著に延長できる事が確認されました。一晩絶食後(遊泳前)のマウスの肝グリコーゲンレベルの低下が少なかった事から,抗疲労効果が脂肪燃焼による肝グリコーゲンの維持という可能性も考えられ,呼気分析を行いました。その結果,オロト酸摂取群では,安静時も運動時も消費酸素量が有意に少なく,さらに二酸化炭素の発生量も減少する事が見出されました。呼吸商は変化しないので脂肪燃焼ではなく,必要な酸素量が低減したという効果です。

この現象は当初は基礎代謝量の減少による効果と考えました。しかしカロリー制限での体重減少には差が無い事から,基礎代謝量の変化ではなく,酸素の利用効率の改善効果であると考えています。酸素の消費量が少なくてすむという事は,組織の低酸素状態の回避(ATPレベルの維持)や酸化ストレス障害の低減効果などが期待できます。
このような必要酸素量を低減できる物質の存在は知られておらず,メカニズムの解明が今後の大きな課題と考えます。

ピリミジンへの期待

 

オロト酸には,低酸素低血流状態での組織のATPレベルの維持効果などの現象は報告がありましたが,そのメカニズムは不明でした。酸素の利用効率改善効果で辻褄が合いますが,さらなる研究が必要です。

近年の創薬研究の多くは特定の受容体や遺伝子がターゲットですが,加齢や酸化ストレス障害に起因する難治療性疾患などでは,組織のエネルギー状態を維持する事が治療や予防に有効ではないかと考えています。即ちピリミジン(善玉核酸)によるエネルギー代謝効率の改善が組織のエネルギー状態の改善となり,その結果としての炎症や酸化ストレス障害の低減効果につながるという期待です。「善玉核酸」は,高齢化社会でのヘルスケアに医薬品とは異なる形で貢献できると考えており,その可能性についてこのウェブサイトを通じて発信していく予定です。

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