ラクトセラムとは

ラクトセラムの構造

英語名はOrotic acidで,国内ではオロト酸(食品),オロット酸(化粧品),オロチン酸(医薬品)などの呼び方があります。1904年に乳清から発見された牛乳中の主核酸(約80/l)で,ギリシャ語で乳性を意味する「oros」から命名されました。中国名も「乳清酸」であり,フリー体の商標としてラクトセラムと命名しました。

オロト酸は,当初はラットの成長促進因子として分離され,ビタミンB13とも呼ばれました。しかし生体内で合成されるのでビタミンではなく,現在はビタミンB13は欠番になっています。しかし,人でも成長には重要な栄養素であり,10組の双子の片方に300/kgを生後15日目から4週間経口投与した結果,投与群の体重が著明に大きかったという驚くべき報告もありますActa Vitamin 17,193-8 1962) 。

乳清酸という中国名の通り,牛乳中の主核酸で80㎎/l程度含まれます。しかし牛乳以外では羊など反芻動物のミルクに含まれるだけで,乳製品などの食品から十分量を摂取するのは難しい成分です。

オロト酸はピリミジンの主要前駆体です。UMP合成酵素の2段階反応でUMPに変換され,UMPから全てのピリミジンが合成されます。5FUなどの抗がん剤ではピリミジン合成をターゲットにしている事からも,ピリミジンが細胞分裂や新陳代謝の鍵栄養素である事がご理解頂けると思います。

医薬品としての実績と現在のステータス

オロト酸は古くから医薬品としての実績があり,ドイツではMg塩が心臓・循環器系の処方薬,フリー体が肝臓薬として長年の実績があります。国内では1960年代にフリー体が臓薬として承認され,武田薬品などの大手製薬企業から処方薬として発売された実績があります。

その後の薬効の見直しで肝臓薬としての認可は取り消され,現在はフリー体1水和物3類医薬品でビタミンB様成分として一般医薬品への200㎎の添加が認められています。滋養強壮,蕁麻疹などに配合された一般医薬品が散見されますが,その知名度は高いとは言えません。

オロト酸の多様な生理作用が健康長寿の鍵成分になると考えて,古川が東京都に食薬区分変更の申請を行ったのが2004年でした。ようやく2012年に「効果効能を標ぼうしない限り非医薬」のリストに掲載され,2017年にラクトセラム®が食品用としての使用が厚労省から認められました。現在はラクトセラムが国内で唯一の食品原料として使えるオロト酸です。