善玉核酸を科学する
株式会社 古川リサーチオフィス
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グルタミンと核酸
1990年頃,Harvard Medical SchoolのWilmore教授がグルタミンの免疫能や組織回復などへの効果から,ICU患者などでの半必須栄養素という概念を提唱した事で,一時期グルタミンが臨床栄養素材として大変注目されました。
しかしその当時から,グルタミンの効果は核酸での効果であり,さらに核酸ではプリンではなくピリミジンが特に重要である事が,Texas大のKulkarni教授らによって示されていました。
核酸はDNA,RNAの構成成分であり,免疫細胞や小腸の上皮細胞など分裂が盛んな組織で不足し易い栄養素と考えられており,その核酸の前駆体がグルタミンという関係にあります。
ピリミジンの免疫賦活作用
ピリミジン栄養の重要性を世界で最初に示したのは,Texas大のKulkarni教授です。
アミノ酸は充足しているが核酸を含まない核酸フリーの完全合成飼料をマウスに投与して核酸の免疫能への効果を調べました。その結果を以下に示します。
核酸フリー飼料では完全飼料と生育に差はありませんが,免疫能は大きく低下し,C.ablicansという酵母をマウスの腹腔内に注入すると2週間でほぼ死滅します。
核酸フリー飼料にアデニンを添加しても生存率への効果はありません。しかしRNA投与で有意に生存率が回復し,そのRNAの4分の1のウラシルで顕著な寿命延長効果が得られています。
この事は,アミノ酸が充足していても核酸が不足すれば免疫能が大幅に低下する事と,免疫賦活に必要な核酸はプリンではなくピリミジンである事を示しています。
プリンはATPやNADなどで細胞内に十分量が含まれており,DNAやRNA合成にはピリミジンの方で厳密にコントロールされており,ピリミジンが鍵栄養成分となっています。5FUなどの抗がん剤がピリミジン合成をターゲットにしている事からも,ピリミジンが細胞分裂の律速栄養素である事が判ります。
核酸は細胞分裂や新陳代謝,遺伝子の修復などに必要な栄養素であり,プリンは細胞内に潤沢に存在するのに対し,ピリミジン合成は生合成が厳密に制御されているだけでなく,ミトコンドリアの呼吸鎖とリンクしている事から,酸化ストレス障害や老化などでミトコンドリアの機能が低下すると不足してしまう重要栄養素という見方ができます。