暑熱ストレスへの効果

検討のきっかけ

ラクトセラムの摂取で必要酸素量の低減効果を見出しました。生体での酸素の必要量は変わらないはずなので,消費酸素量が低減する事は酸素利用効率改善(無駄の削減)効果と予想され,発熱量の低下ROSの発生低下が期待されます。そこで,過酸化脂質が指標となる暑熱ストレスモデルでのラクトセラムの効果を検証しました。

ブロイラーの暑熱ストレスモデルでの検証(宮崎大農 井尻先生)

実験条件
供試動物:チャンキー系ブロイラー雄ヒナ32羽(1群8羽)
試験区分:適温対照(22±1℃)区
     適温+オロト酸0.7%添加区
     暑熱対照(35±1℃)区
     暑熱+オロト酸0.7%添加区
飼育環境:24時間照明,飼料,水は自由摂取
     暑熱感作 8時間/日
     14日目~28日(2週間)
実験結果
暑熱ストレスで増加する過酸化脂質がオロト酸添加で抑制された。

アミノ酸,核酸代謝についての考察

暑熱ストレス条件では,アミノ酸ではグルタミンの減少,核酸ではプリン化合物の増加ピリミジン化合物の減少が認められました。またオロト酸の投与でウラシルから生成するβアラニンイミダゾールジペプチドなどが増加しました。

暑熱感作,オロト酸投与でのアミノ酸,核酸代謝の変化

暑熱ストレス下でのアミノ酸・核酸代謝は以下のように考えられます。

ストレス状態でのピリミジンの意味と意義

熱ストレスに限らず,ストレス状態では,ATP不足のためにAMPが生成し尿酸にまで代謝されます。分解物であるイノシンやヒポキサンチンがサルベージ合成で再利用されずに尿酸に代謝される理由としては,アデノシンが重要な情報伝達物質であり,食事や運動,ストレスなどの外因で変化する事が望ましくないためと考えられます。

その結果,不足するアデニンヌクレオチドはde novo合成で補給される必要があり,暑熱ストレス下では核酸原料のグルタミンが不足し,その結果,オロト酸も枯渇すると考えられます。酸化ストレスの増大から,アスコルビン酸のレベルの低下も認められ,過酸化脂質のMDAが増加すると考えられます。

オロト酸の充足条件では,ROSの低減による過酸化脂質低減効果だけでなく,ウラシルから生成するβアラニンを含むイミダゾールジペプチドの増加も酸化ストレス障害低減に寄与していると考えられます。ちなみに,オロト酸添加でもアスコルビン酸がコントロールと同程度に減少しており,オロト酸による抗酸化作用はビタミンC,E,グルタチオンなどによる抗酸化システムとは異なるメカニズムである事も確認されています。

ピリミジンは免疫細胞など分裂盛んな組織での半必須栄養素として知られています。四季では夏に最も免疫が低下する事が知られていますが,暑熱ストレスでのピリミジン不足が原因である可能性も示唆されます。特に高齢者ではアミノ酸摂取が推奨されていますが,アミノ酸が充足しても,アミノ酸から作られる核酸が不足すれば免疫能が低下する事は知られており,特に夏場の高齢者にはラクトセラムが最も重要な栄養素であると考えています。